2014/06/05
…ご指名頂いてしまいました。
先に言い訳させて頂くと、私も最近の東洋経済のプロレス的な煽りは結構苦手です。日経もそうですが、最近どうも、メディアが自社利益を優先させてかエンターテインメント化していてどうかと思いますし、煽り過ぎだとは思います。
と言うわけで細かくて非常に申し訳ありませんが、「少し変わる」であろう、私が気になった点を、引用させて頂きながら、説明させて頂きたいと思います。宜しくお願い致します。
取締役を送り込む意味について
株を過半持てば、通常は役員も過半を送り込めるわけで、役員が交代するのは何も不自然な話ではありません。どこでも行われている話です。『おやつカンパニーがカーライルに買収された!』というタイトルなら分かりますが、役員の過半が辞任したというタイトルはあまりにも素人の視点によるものです。
社外取締役が過半ということですので、東洋経済が煽り過ぎであったり、表現があまりにもあまりなのは事実なのですが、視点から「過半数取締役を送り込む意義」が欠けています。
取締役会は、純粋に多数決となりますので、何等かの上程事項を審議する時に、半数以上をカーライル社が握っている以上、全ての事項はカーライル社に決定権があります。たとえ現経営陣に通常時の事業執行を任せていたとしても、意に沿わない事項があれば権限をもって変更が可能ですし、執行陣もこれを意識して事業を進めることとなりますので、大きな変化であると言えるのは間違いないです。
いかにPEファンドが友好的な買収であるとはいえ、「おやつカンパニーの経営は何ら変わらない」とは言い辛いところですし、その辺はちゃんと言及しておかないと、読み手をミスリードしてしまう点があると感じました。
取締役・執行役員と会社制度について
確かに、幹部は取締役を辞任しているでしょうね。でも、それは会社を退職したということをそのまま意味するわけではありません。おやつカンパニーのプレスリリースからは、それらの幹部は恐らく執行役員という形で残っているのではないかと推測されます。"経営執行"は"現経営陣が中心になって"と書いてありますので。
強く違和感を感じたのは、「会社を退職した」「恐らく執行役員という形で」という2点です。人事や経営企画などの管理系の部門に所属した事のある方なら、この辺の表現を、たとえ素人向きの説明文書だったとしても使うことを忌避すると考えました。
■退職
会社法で定義されている通り、株式会社の取締役は株主総会の承認を経て委任されます。つまり、一般的に取締役は雇用関係にある会社の従業員ではなく、委任契約に基づく委任関係にあります。退職というのは労働契約の解除を示しますので、取締役を主語とする場合は退任と書くことが多いです。
■執行役員
取締役を退任され、再び従業員として雇用されたのだろうと表現されるのであれば判りますが、「執行役員」という言葉を敢えて出すことにも違和感がありました。
執行役員は取締役とは違い明確な法定義はなく、各企業の独自基準における管理職の位ですので、おやつカンパニー社さんがどのような組織設計をしているのかが判らない状態で、限定した役職を文面にされるのはおかしいと感じました。
また、余談ではありますが、一般的にこういった場合は既に従業員規程で定義できるレベルの待遇を超えていたりする為、顧問などの取締役以外の職種に当て嵌める場合が少なくない事を付記させていただきます。
特に「執行役員」と銘打ってしまったことで、上記と同様、読み手のミスリードを誘ってしまう部分だと思いましたので、指摘させて頂きました。
とまぁ、どうてもいいと思われるところかなとも思いましたが、補足説明気味に、気になった所を挙げさせて頂きました。何かの参考になりましたら、幸いです。
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